私が恋した男(旧題:ナツコイ~海男と都会男~)
◇最終章:私が恋した男
うう…、飲みすぎたかな?

完璧な二日酔いになったかもと頭痛を堪えながら四つ葉出版社に出勤すると、お疲れ様会に参加をしてた皆も顔色が悪くて、暫く飲み会は出来ないよね。

昨日までの疲れもあったし、またの機会にということにしておこう。

タウン情報部に行くとまだ姫川編集長がなくて、そういえば姫川編集長はあの後は何処に行ったんだろう。

行き先も教えてくれなかったし、気になるなぁ。

自分の席に座り、今日も原稿を進めなくちゃとパソコンに電源を入れたら編集部フロアのドアが開いたので顔を上げると、中に入ってきた姫川編集長の顔を見て驚いた。

姫川編集長の顔には痣が出来てたり、頬っぺたにはガーゼが施されているから、編集部フロアにいる皆がぽかんとしていて、水瀬編集長なんて手に持っていた原稿をドサッと床に落としているし。

当の本人はどこ吹く風みたいにづかづかと歩いて、タウン情報部の自席にドカッと座った。

「ど、どうしたんですか?その顔?!」
「いちいち騒ぐなよ」」
「いや、でも、その痣やガーゼを見れば誰だって驚きますって!」

突っ込みしていると、水瀬編集長が姫川編集長のところに来た。

「ねぇ姫川、そんな顔ってことは誰かと喧嘩したの?」
「ちょっとな」
「ちょっとって…、そんなこと(殴ったり)をしたら高坂専務が黙ってないよ?」
「私もそう思います」

水瀬編集長の言葉に、私も同意件だ。

「うるせーな。九条、ちょっと、こい!」
「ええ?」

姫川編集長は自席から立ち上がると私の腕を掴んで、編集部フロアの外に出た。

そして廊下に出ると私を壁にドンッと押し付けて、両手を私の顔の横について、私は姫川編集長に閉じ込められたようになる。

「ひ、姫川編集長?あの…、こんな所を誰かに見られたらまずいです!」
「海斗、お前が書いた記事を読んだぞ」
「えっ?!」
「昨日、高坂と印刷所に無理言って見本誌を分けてもらって、海斗の所に行った」

 姫川編集長は両手をすっと降ろす。

「んでお前が書いたメインの記事を、真っ先にアイツに読ませた」
「海斗さんは…、何て?」
「気になる?」
「そりぁ、気になりますよ!まさか姫川編集長が海斗さんの所に行ってるとは、思ってませんでしたから」

私はムスッとする。

「俺からは言わない、海斗に直接会って聞けよ」

会って聞けって簡単に言うけれど、会ってくれるかの保証がないし、でも読んだ感想を聞きたい気持ちも嘘じゃない。

「早くいけよ。高坂にはうまいこと言っておく」
「姫川編集長の性格が、いいのか悪いのか解りません」
「元々こういう性格だから、直んないね。つうか、早く行けよ」
「分かりました!行きますよ!」

半ばキレながら踵を返してフロアに戻るけど、ピタッと止まって姫川編集長の方に振り返ってた。

「行ってきます!」
「海斗を頼んだぞ」
「はい!」

私はフロアの中に戻り、帰る準備を…海斗さんの所に向かう準備をして、四つ葉出版社を出ていった。
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