私が恋した男〜海男と都会男~
「う…ん…」

 私は重たい瞼を開けると外からの日差しが和室を照らしていて、部屋に置いてある時計の時間を確認すると午前6時をまわったところだ。

 私は布団を片付けて渇いている私服に着替えて台所に向うと、ヒデ子婆ちゃんがおにぎりを作っていて、海斗さんの姿がない。

「ヒデ子婆ちゃん、おはようございます。海斗さんはまだ寝ているんですか?」
「あの子は漁に出てるわよ」
「こんなに朝早くからですか?」
「そうねぇ、夜中の3時には家を出て行くわ」

 じゃあ、あまり寝てないで漁に行ったって事?昨日―…というよりかは深夜になるけど、ちょっとだけ2人して夜の海の景色を見ていて、その後はお互い寝室に戻っていったから、てっきり私と同じように起きてくるかと思っていたけど違ったんだ。

 私が仕事の事で悩んで泣きそうな気持ちになってた所を、海斗さんが見せてくれた海を見て心がぽかぽかと温かくなったから、せめて今日もお礼を込めてお手伝いさせてもらおう。

「ヒデ子婆ちゃん、お手伝いさせて下さい」
「助かるわ。麻衣ちゃんはこのお野菜を切って、そこのフライパンで炒めてね」
「はい!」

 私はヒデ子婆ちゃんの隣に立ち、ぎこちない手つきで包丁を使い野菜を切り始めるんだけど、人参なんて細かったり太かったりしてるし、普段から料理は凝ったものは作らないから、野菜の太さもバラバラで海斗さんの手つきとは大違いだ。

 ヒデ子婆ちゃんは慣れた手つきでおにぎりを次々と握っていき、おにぎりの具材は梅干しや焼きたらこだったり、山菜と色とりどり。

「料理が出来たら、宇ノ島の漁港に行くわよ。海斗たちが漁から戻って魚を業者に卸売りして片づけたら、皆食堂でそれぞれご飯を食べるのが日課なの」
「そうなんですね、夜から漁に出ていたりで大変ですね」
「そうねぇ、海斗は最初の頃は眠さで海に落ちそうになったって言ってたわ」

 ヒデ子婆ちゃんは嬉しそうに海斗さんの話をするから、私も自然と頬が緩む。

 出来たての野菜炒めはヒデ子婆ちゃんが用意したタッパーに入れ、おにぎりは1つ1つ丁寧にラップを巻いた。

「それじゃ、港に行きましょう」
「はい!」

 私が作った料理、海斗さんが食べてくれたら嬉しいなぁ。
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