私が恋した男(旧題:ナツコイ~海男と都会男~)
 編集部に入ってタウン情報部の所に行くと姫川編集長の姿は無く、今日はお昼頃に出社かな?

 姫川編集長が来た時にすぐチェックが出来るように校正を進めておこうとパソコンの電源を入れて、早速校正の続きを開始した。

「ここの送り仮名と、こっちは漢字の訂正っと」

 校正ソフトに取り込んだ文章には、校正をしなくてはいけない赤の線と緑の線が多数あって、姫川編集長のチェックが入る前にこの線を全て消して見せる!!こんな画面を見たら、絶対に茶々を入れてくるもの。

「一度、小学生をやり直せよ」
「そうそう、やり直―…って、姫川編集長!!いるなら声をかけて下さいよ!!」

 いつの間にか姫川編集長が私の隣に立っているし、勝手に画面を見ないで欲しい。 

「それが終わったら、もりやに昼飯を食いに行くぞ」
「行きます!でも、入稿まではさせて下さい」
「分かった」

 姫川編集長は自分の席に座り、パソコンの電源を入れてキーボードを打ち、その姿をちらっと見ながら姫川編集長の誘いについて考える。

 初めて姫川編集長から誘われたのは高層ビルにあるお店で、料理も景色も素晴らしかったし、私が『Focus』の記事に初めて携わった号が発売したからという理由のお祝いということが嬉しかった。

「ぼさっとしてないで、さっさとやれよ」
「すいません」

 普段はこんなにも口調が厳しいのに、お祝いをしたりふいに見せる笑顔だったり、最近の姫川編集長のことが気になるけれど、今は目の前の原稿に集中しなくちゃ。
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