私が恋した男〜海男と都会男～
「姫川編集長、あそこにある売店でお土産を買いたいのですが宜しいですか？」
「は？」

　私の言葉に姫川編集長は足を止め、私たちは人々が行き交う通路の真ん中で立ち止まる。

「えっと、実は先日取材のために宇ノ島近辺を散策していた時に海に落ちまして、その時にお世話になった方にお礼をしたくてお土産を買いたいんです」
「海に落ちただぁ？」
「すいません。私の不注意が原因で落ちました」
「俺は原因を聞いてるんじゃねぇよ！俺はそんな危険な思いまでして取材をしろとは一言も言ってねぇし、もしあのまま海の底に沈んでいたら誰があの季刊を書くんだ？」
「………すいません」

　姫川編集長が怒りを込めながら言うのは正しくて、すいませんの一言しか出なかった。

　取材のためにって思った自分の行動が、こうやって誰かに嫌な思いをさせてしまうのはもうやめなくちゃ。

「本当に申し訳ございません。次からはこのようなことがないようにします」

　深く頭を下げると、私たちを避ける人たちの足が見える。

「分かったから、買うんだったら急げ。電車が来る」
「はい、急いで買います」

　少し鼻をすすりながら頭をあげ、私たちはお土産屋さんに入ると様々なお土産の種類が置いてあって、お煎餅だと固くて駄目だろうから、食べやすい物にしようかな。
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