私が恋した男(旧題:ナツコイ~海男と都会男~)
 電車に揺られ一時間が過ぎて、もうすぐ目的地の駅に着きそう。

「そいういや、海に落ちたって、何をして落ちたんだ?」
「あ―…、帽子が風に飛ばされて取ろうとしたら…」
「そのまま落ちたってか」
「はい…、でも直ぐに助けてくれた人がいて無事に助かりました!」
「一度沈んだ方が良かったかもな」

 私はガッツポーズをとると、姫川編集長はやや呆れ顔になる。

「取材が終わったら、その人の所に行きます」
「俺も行く。上司として部下がお世話になったって言わなきゃいけねーし、助けてくれた人はどんな人だ?」
「えっと、海に落ちた私を助けてくれたのは、漁師さんなんですよ」
「漁師だと?!なら、水羊羹3つはおかしくないか?」
「その漁師さん以外にも、漁師さんのお婆さんの家に泊めてくれたのでそのお婆さんの分と、路地裏の近くにある定食屋の―…」
「ヨシハラの爺さんだろ?」
「何で姫川編集長が、ヨシハラのお爺さんを知っているんですか?」
「ちょっとな。お前を助けたのはアイツか……」

 ちょっとって、姫川編集長が言うアイツって私から見たら海斗さんのことだけど、その海斗さんのことも知っていることになるし、姫川編集長とどんな関係なのだろうかと、宇ノ島駅に着くまでその疑問で一杯だった。
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