私が恋した男(旧題:ナツコイ~海男と都会男~)
「おぉ、待ってたよ。というか、敬語は無しだって」
「痛てぇな。今日は仕事で来てるし、部下も連れてんだ」

 男性は姫川編集長の肩をバシッと叩くと、姫川編集長は叩かれた肩を払う仕草をした。

「初めまして、九条です」
「こちらこそよろしくね。岳にこんなに可愛い部下がいたなんて、知らなかったなぁ」
「うるせぇ!可愛くなんて思ってねぇし」
「ちょっと、それ失礼ですよ!」
「ハハっ、仲がいいじゃないか」

 男性は私たちのやりとりにニコニコしているけど、姫川編集長のことを下の名前で呼ぶなんて、かなり親しい間柄みたい。

「海斗も来てるし、呼んでくるよ」
「いや、いい。仕事しないといけないから」
「おーい、海斗!こっちに来い!!」

 えっ?海斗って、海斗ってまさか……、その名前を聞いただけで胸のドキドキが波のように襲って、本当に海斗さんなのかな?

「何ですか?……、どうしてあんたが?」

 そして男性に呼ばれて建設中の海の家の裏側から現れたのは、海斗さんだった。
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