俺の妹が可愛すぎて。


「うぅ〜……ユキ、みずぅ〜!!」


ベッドに寝ていた母さんの叫び声が聴こえた。


「はいはい」


キッチンに行き、コップに水を入れ、気持ち悪そうに横たわる母さんに渡した。


「……ん?ケーゴは?」

「今帰ったよ。母さんをここまでおぶってくれたんだよ、ケーゴさん。……ってたく、ちゃんと礼言っとけよ」


そう言うと、母さんはなんだか素直にコクンと頷いた。


「化粧落として、着替えて寝たら?明日も仕事だろ?」


そう言いながら、母さんが今さっき脱ぎ散らかしたであろうトレンチコートをハンガーに掛けていると、


「……ユキ、ごめんね」


と、いつになく母さんが寂しそうに呟いた。


「何が?」

「……今まで、こんな母さんといて苦労させてごめんね」


酒を飲むと、キス魔になるかいつも以上に甘えん坊になるかの母さん。

今日はなんだかシュンとしている。


「……なんだよ、急に。なんかあった?」


ベッドのシーツの一点を見つめたまま、シュンとしてベッドに座る母さんの横に、俺は腰を下ろした。


「……ううん。今まで……苦労かけたなって……お父さんと離婚してから、初めはユキ、パパは?なんでパパいないの?って泣いてたけど……」

「……そうだっけ?(笑)覚えてねぇや」

「……でも、いつからか『パパ』って一言も言わなくなって、家事の苦手な母さんに代わって色々手伝ってくれて、本当嬉しかった。……ケーゴと暮らすようになったら、母さん、仕事も続けるけど家事も頑張るから」


そう言うと母さんはニッコリ微笑む。


「ほんとかよ(笑)……まぁ、あんま期待せずいるわ(笑)」


そうイジワル言うと母さんは「もう、ユキはほんとイジワルぅ〜」と言いながら、俺の頭をポンポンと撫でた。


「……みんなと仲良く、いい家庭作ろうね。」

「うん。あ、そうだ、あの風馬って子さ、中学ん時もサッカー部で中学では県大会優勝してんだって。」


それから酔ってほとんど話を聞いてなかった母さんに、風馬のこと、優花のこと、ケーゴさんが母さんを重いと言っていたこと……色々話をした。



二人暮らしも、もうあと数週間。


新しい家族との暮らしも楽しみだけど、
母さんだけとのこの時間が、あと少しだと思うと、やけに寂しくなった。


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