俺の妹が可愛すぎて。


駆け寄って、ユキちゃんの後ろから電柱の影にいた人を見ると、パパより少し年上に見えるスーツを着た男性がいた。


男性はユキちゃんに掴まれていたせいで乱れた胸元を直していた。


「……ユキちゃん…?」


何にも言わず黙ったまま立ち尽くしているユキちゃんの腕を握って、声をかける。

それでも黙ったまま、手に握られた何かを見つめたまま動かなかった。


ふと、そこへ視線を落とす。



「…………これ……」


古くて、ふちがボロボロになった写真。


小さな男の子と、隣に映る男性はー。



「………信じてくれるか…?」


服を整えた、スラッとしたその男性が優しく微笑む。


その表情は……


どことなく……ユキちゃんに似ていたー。


「………父さん……?…」


ポツリ呟いたユキちゃんがその男性をまっすぐ見た。



吹き込んだ風は、この前感じた時よりも冷たくて……

……もう……秋が来ていた。












「………『那津川 渉(なつかわ わたる)』さん…?」


駅近くの喫茶店。

テーブルを挟んだ前には、さっきの男性、隣にはユキちゃん。

男性から名刺をもらうと、名前の横には『株式会社 リバナエージェンシー 代表取締役』と書かれていた。


「……急に来て、こんな風につき回してしまう形になって申し訳なかったね」


男性は頭を掻きながら、あたしに謝った。

あたしは首を横に振った。


優しく微笑む男性を見て、やっぱりどことなくユキちゃんに似ている気がした。





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