俺の妹が可愛すぎて。


優花が透子の手伝いをして、俺の近くにいない隙に晴にビビりまくっている風馬に俺はあるものを渡した。


「……なに?飴?」


俺から手渡されたその飴を、不思議そうに受け取る風馬。


「……いちいち晴の言動にビビってんなよ。自分のサッカーしろって言っただろ?これは御守りみたいなもん。」


風馬に渡したのは、さっき優花に余分にもらった練乳イチゴミルクの飴だった。


「……で、なんで飴なわけ?これ、さっき優花にもらったやつじゃねぇの?」

「うん、そう。なんかそれ舐めてたら、ホッとしたから。」


そう言うと、風馬はつまんなそうに「ふ〜ん」と呟いた。


ポジションや作戦の最終確認をする為、試合に出るメンバー全員が先生に呼ばれる。

俺はベンチの片隅にポツン。


ケガをしていなければ、本当は今風馬がいるポジションに俺がいるはずだった。

次期キャプテンとして、今のキャプテン以上にみんなを引っ張っていかなければならなかった。


そう思うと、今すぐにでも松葉杖なんか放ってサポーターなんか外してその輪の中に入りたかった。


だからと言って晴を責めることなんて出来ないし、小さなことで晴に嫉妬した不甲斐ない自分が情けなかった。


「……なに、ただの見学者みたいにしてるの?ただ、座ってるだけじゃ邪魔なんだけど」


冷たい視線でそう声をかけてきたのは、透子だった。

隣にはスコア記録表を持った優花がいた。


「だってこれじゃ何にも出来ないじゃん。水とか運ぶの手伝ってやりてぇけどさ」

「別に、あたし達の仕事手伝えなんて一言も言ってないけど」


相変わらず冷たい透子の言葉。


そりゃ風馬も「なに、あの人、マネージャー?!さっきから無表情過ぎるんだけど!」と言われるはずだ。



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