あなたが作るおいしいごはん【完】

「…そんな。
まるで私…お客様みたい。」

そう口にした私に彼は言った。

『…そんなつもりはないよ。
ただ…萌絵ちゃんはまだ学生で
未成年だから、靖雄さんからも
大事にしてやってと言われてる。
…だから、入籍までは
萌絵ちゃんを抱かないし
だからと言って浮気もしないから
安心していいよ。
…ただし、キスだけは
許して貰うかもしれないけど…。』

「…キッ、キスッ!?」

思わず反応する私に

彼はクスッと笑うと

『…入籍までに萌絵ちゃんは
俺の事を好きになる努力をして貰えれば
それでいいと思ってる。
俺も……そうするから。』

そう言って彼は

私の前に右手を差し出した。

『…この結婚は
親父の会社の未来をも背負ってる。
会社が潰れて欲しくはない。
…だから萌絵ちゃん…。
この話を受け入れて
俺の婚約者になってよ。』


……彼は私を好きじゃないと思う。


父への恩返しと

自分の会社の存続が目的の政略結婚。

だけど、どれだけ拒否しても

無駄だとわかってるから…。


「……わかりました。
カズ兄ちゃん…。
よろしくお願いします。」


私も右手を差し出した。



…私は彼との

政略結婚に応じる事をこの日了承した。

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