あなたが作るおいしいごはん【完】

『……どうかした?
遠い目をしてるけど…疲れた?』

気づけばボーッとしていた私を

彼が心配そうに隣で見つめていた。

「……カズ兄ちゃん。」

我に帰った私は

オレンジジュースを一口飲むと

彼の方に顔を向けて口を開いた。

「…カズ兄ちゃんは
普段から凄く忙しいし
これからさらにもっと忙しくなるのに
私はそんなカズ兄ちゃんを
ちゃんと支えてあげられるのか
……正直わからない。」

『……萌絵ちゃん?』

「…いくら政略結婚でも
こんな未成年で、学生で
カズ兄ちゃんの仕事の事や
それに伴う苦労を何一つ
理解出来ていないような私と婚約して
好きでもないのに
一つ屋根の下で一緒に暮らしていく事を
本当に後悔しないの?」

『…ちょっ…萌絵ちゃん。』

「…私の事好きでもないのに
そんなに気を利かせてくれて
優しくしてくれてるだけでなくて
私に与えてばかりで疲れないの?
……苛々しないの?」

すると

『…ちょっと黙って!!』

彼の細長い人差し指が

一気に捲し立てていた私の唇に

ギュッと強く押し当てられた。

「………!!」

その感触に私は目を見開いた。




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