田無タワー慕情
慕情
「田無タワーが見える」


永久子(とわこ)が言った。
夕焼けが染める蜜柑色の部屋。
俺のベッドに転がり、漫画を読みながら。

マジか。
コイツの読んでるの、俺がさっき買ってきた新刊じゃん。
今日の課題が終わったら読もうと思ってたのに。


「田無タワー何色?」


「まだ、光ってナイ。もうちょい暗くなんないとダメだね」


永久子は答えて、再び漫画に視線を戻した。
俺はさっさと勉強を終わらせ、漫画を取り返すべく、再び机に向かう。


「妙に懐かしいね」

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