ひつじがいっぴき。

先生にはお姉さんがいて、顔を合わせるたびにこき使われているとか……。


そういうことをたくさん知っていった。


電話では緊張するものの、それでも始めのころよりずっと話せるようになったから、焦ることもなくなった。


だけど、やっぱり学校では違う。

学校にいる時の井上先生は社交的で、しかも電話だと姿が見えないから気にすることもないんだけれど、面と向かって先生を見ると、モデルみたいでとてもカッコいい。


だからいつも生徒に囲まれていて、わたしはただその光景を見ているだけ――。


でも、井上先生は夜になるとこうして話しをして、わたしと同じ時間を過ごしてくれている。


それってなんだかとっても特殊な関係で、ものすごく優越感がある。

だって、井上先生はものすごく人気なのに、こうしてわたしと通話してくれているんだもん。

それがとても嬉しい。

わたしが井上先生を特別だって思うように、井上先生にとってもわたしが特別だって思ってくれているみたいですごく嬉しいの。


眠れなかったわたしにとって、眠れるようにしてくれた先生は救世主。

だからとっても特別。


だけど、それはわたしの独りよがりだった。

それに気づかされたのは、井上先生が研修で青空学園に来て2週間目の放課後のこと――……。


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