ひつじがいっぴき。

そりゃそうだよね。

わたしは可愛くもない冴えない奴なんだもん。

カッコいい先生におんぶされるのはかなり不似合いだと自分でもそう思う。


だけど、睡眠がとれないわたしの体は抵抗することができず……。

先生に恋心を抱くわたしは拒絶することもできない。




今だけ……今だけでいい。


自分の身のほどをわきまえているから……。


だからほんの少しだけでいい。


先生の体温を感じたい……。

わたしは苦しくなる胸を押し殺し、目を閉じた。


無言になったわたしは当然、井上先生に家までの道順は伝えてはいない。


だけど、井上先生は今、副副担任みたいな立場でもある。

だから先生はわたしの家が学校の正門を出て一本径を通った先にあるっていうことは知っている。


大好きな人におんぶされてわたしの心臓はドキドキを繰り返す。

だけどそれだけじゃなくって、あたたかい背中の体温に触れて揺れるリズムが心地よかった。


井上先生への恋心が発覚して、あんなに眠れなかったのに不思議――。


……わたしのまぶたが……少しずつ、落ちていく……。


「中山さん、鍵はある?」


どうやら井上先生はもう家に着いたらしい。

そりゃ、学校から徒歩10分くらいの場所だからすぐに着く。

でも、わたしとしてはもう少し井上先生にくっついていたい。

もっと先生の体温を感じていたかった。

先生と離れてしまうことが名残惜しく思ってしまう。


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