ひつじがいっぴき。

ふわふわ、ふわふわ。

わたしの頭を撫でてくれるあたたかい手――。


だけど、これが夢の中だっていうことは知っている。


きっと多忙な井上先生は学校に戻って教員についてのアレコレを先生からいろいろ教わっていると思うから――……。


これが夢でもいい。

わたしの勝手な願望でもいい。

それでも、こうしてずっと頭を撫でてほしい。

わたしの側にいてほしい。


――好き。

大好き。

すごく好き。


アラタさんよりもずっと井上先生のことが好き。


わたしの心は井上先生への『好き』がいっぱいになって、あふれていく……。


そうして井上先生に対するわたしの想いはとうとう口からすべり出た。


「井上せんせ……好き……」

今までずっと胸の中に押さえ込んでいた気持ちを言ってみると、胸の奥で何かがストンと落ちた。



苦しかった想いを口にすることができて少しだけ気分が楽になる。

だけど、それは長くは続かない。

どうしてだろうか、わたしの頭を撫でてくれた手が止まってしまった。

だって、これはわたしの勝手な夢の中。


それなら、わたしが夢の中で何をしようと、何を言おうと関係ないじゃない。

それなのに、わたしはどうしてこうも居心地が悪く感じるんだろう。


その答えはすぐあとで知ることになった。


大好きな……その人の声で――。



「――え?」

わたしの耳元で聞こえた驚いた声。


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