ひつじがいっぴき。

「中山さん? 中山さんはとても可愛らしいと思うよ?」


「うそ……うそうそうそうそっ、そんなことないっ!!」

わたしは首を大きく振って、先生の優しい言葉を否定する。


だけど、先生はわたしから離れない。先生は意外と頑固だ。


「中山さんの大きな目はとても魅力的だし、真ん中にある小さな鼻は可愛らしい」


どうして?

どうしてそんなことを言うの?

本気にしちゃ、ダメなのに……。

それなのに、わたしは先生の言葉にうつつを抜かしてしまう。

待ちわびているその言葉を受け入れてしまいそうになる。


「中山さんが好きだよ。

その証拠にホラ、君と一緒にいる時、俺の心臓はいつもこんなにドキドキしてる……」

先生はわたしの右手を胸元へと誘い、当てた。


トクン、トクン。

速い鼓動が手から伝わってくる。

……ほんとうなの?


先生はわたしを本当に好き?


でも……それならどうして初めに言ってくれなかったの?


先生がアラタさんなら打ち明けてくれてもよかったはずだ。


どうして言ってくれなかったの?

やっぱり先生はわたしのことを振り回して遊んでいるだけ?


イヤな気持ちが先生を想うわたしの胸を萎縮(イシュク)させてくる。


「どうしてアラタさんだって、言ってくれなかったの?」

思ったことを尋ねると、先生は顔をゆがめた。



「……嫉妬してた」


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