ひつじがいっぴき。

「海莉(カイリ)、好きだよ。

お願いだ。俺の恋人になって……」


先生の言葉はまるで懇願しているようで……。


コクン。

わたしはうなずくことしかできなかった。



そうして、わたしは先生と恋人同士になった。



信じられないけれど、これがわたしの恋物語。


誰よりも引っ込み思案で、誰よりも他人と話すことが苦手なわたし。

だけど、こんなわたしでもこうして素敵な人が現れるんだもん。

世の中も捨てたもんじゃない。


心から実感した出来事だった。



……それから井上先生は無事に3週間っていう教育実習の期間を終えて大学に戻った。


だけど、わたしはぜんぜん寂しくない。


だって、わたしには――――――。




『ねぇ、海莉。起きてる? 今度の休日、君と一緒に出かけたいな』



わたしの耳元でささやく優しい声。

わたしの名前を添えてデートに誘ってくれるその人がいるから……。



*END*
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