桜まち 


「藤本と喧嘩でもしてるのか?」
「なんで?」

「だって、お前。あんなにいつも藤本にべったりでニコニコだったのに、今日は顔も見ないであの態度じゃん」
「何その、べったりって。しかも、またお前って。櫂君とは、席が隣同士なんだから常に一緒なのは当たり前でしょ」

「ふ~ん」
「だいたい、喧嘩なんかしてないし」

「じゃあ、川原のその態度は何?」
「態度って、別に……。いつもと変わらないよ……」

「それ、マジで言ってんなら。ライバルなのに、俺藤本の肩持ちたくなるよ」
「なに、それ」

「川原はさ。いつもニコニコ明るくて、能天気なところが売りなのに。あんな態度されたら、俺なら凹むってこと」
「佐藤君は、凹まないでしょう」

「お前、俺をどんな奴だと思ってんの?」
「だから、お前って……。佐藤君は、酔っ払っていてもしらふでも、適当に女を口説けるいい加減男でしょ」

「おいおい。聞き捨てならないなー、そのセリフ。俺だって、一応真剣に川原に告ったんだけど」
「そうなの? 真剣さがいまいち伝わらない」

「ザックリ切り捨てるな」

佐藤君は、少しだけ拗ねた顔をする。
その顔を見ていたら、昨日のできごとを、この第三者である佐藤君に話してすっきりさせたくなった。

「て言うかー。ちょっと訊いてくれる? 実は、昨日ずっと好きだった人にキスされたんだよね」

私が告白すると、飲んでいたお茶をブッと佐藤君が噴出した。

「ちょっとー。汚いから」

お絞りでテーブルに飛んだお茶を拭いていると、佐藤君は驚きながら訊き返す。

「なんだよ、キスって。しかも、好きな人って、誰っ?!」
「うーん。ちょっと前に一目惚れしてね。その人が偶然にも私のお隣さんになってね」

「え? 何? どういうこと? 川原んちの隣に住んでんの?」
「うん」

「なんか、展開速すぎて、ついていくの必死なんだけど。それにしても、好きなやつが隣に住んでるって、凄い確立じゃん」
「そうっ。それなのよ。本当、一時期はストーカー騒ぎもあってかなりテンションダウンしていたんだけど。気がつけばお隣に住んでいて、昨日はキスまで……」

「ストーカーにキス? よくわからんけど、とにかく何で好きな奴とキスしたのに、そんなにテンション低いんだよ。つか、ストーカーって、どんな奴だよ。お前、ストーキングされてんの? ちゃんと警察に届けたほうがいいぞ。最近は、その手の犯罪が多いからな。なんなら一緒に警察について行ってやろうか?」

「あ、いや、うん。ストーカーの話は、もう解決したからいいんだよね」

警察なんてワードが出て、思わず汗が出る。
て言うか、ストーカー扱いされたてたのは、私のほうだからね。


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