桜まち 


櫂君の顔をマジマジと見ながらしばらくそんなことを考えていると、何故だか櫂君の目が泳ぎだした。

「どしたの?」
「え? あ、いや。だって菜穂子さんがあんまりじっと見てるから」

「ああ、ごめん、ごめん。ちょっと考え事してた」
「か、考え事ですか。そうですか……」

私の返答に、泳いでいた櫂君の目が急に翳る。

なんともアップダウンの激しい櫂君の表情だ。
でも、こうなんというか、キラキラした目をしたり、翳りのある目をしたり。
見ていて飽きないかも。

櫂君好きの子は、こういうのにイチコロにされてしまうのだろうな。

そういえば昼間、とばっちり受けたんだよね、私。
櫂君好きの後輩ちゃんから、ねっとりとした嫉妬の目で見られて言われてしまったのです。

「川原先輩ってー、いつも藤本先輩と一緒にいますけど、まさか彼女じゃないですよねぇ?」

ねっとりとした後輩ちゃんは、語尾を延ばしてねっとりと私に言ったのでした。
もちろん私は、仕事上の付き合いだよ。と爽やかに笑ってはみたものの。

「ですよねやぇ。先輩と藤本さんじゃあ、年の差ありすぎですよねぇ」

なんつって、後輩ちゃんは私のことをこバカにしたようにクスクス笑ったのでした。

年の差ってなにさっ。
たった三つでしょうがっ。

という、叫びは胸に秘め。

“怒り”マークが眉間に出ていないか注意しながら、私は大人の態度で接したのでした。

もう、櫂君がもてるのは勝手だけど、ああいうのは本当に迷惑だよ。
女子の嫉妬って、恐いんだから。

だから、余計に櫂君が私なんかとご飯を食べていていいのか? なんて思ってしまうのです。


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