桜まち 


「お義母さん?」

おばさんは、どうやらここへ来たお嫁さんだったらしい。
タイさんのことをお義母さんと呼び、その行動を見て慌てながらも、どうしたらいいものかとそばで戸惑っている。

「さっきはありがとね。これ、持っていきなさいな」

そう言うと、お代は要らないよ。といってお煎餅がたんまり入った袋をわたしに握らせた。

そんなつもりで寄り道したわけじゃなかっただけに、なんとも気がひける。
さっき自分が選んだ分だけでも払うといったのだけれど、タイさんは断固として引かず、結局私はわざわざお煎餅を貰いに来てしまったような状況になってしまった。

ハロウィンの時期でもないし、しかもいい大人なのに、本当に申し訳ない。

「また来なさいな。あんたのところのお婆ちゃんに、よろしくな」

タイさんはそういうと、縮こまった背中に右手を乗せて、皺くちゃの可愛らしい笑顔で私を見送ってくれた。

申し訳なく思いながらも、小さい頃はこういうお店に母と寄り道して、おやつ代わりに買い食いなんてしていたことを思い出した。

母は、お祖母ちゃんには内緒だよってよく言っていたけれど、私はここのお煎餅や商店街のたい焼きを母と一緒に食べるのが嬉しくて、ついお婆ちゃんに買い食いのことを話してしまっていたっけ。
そして、お母さんが内緒だと言うわりに、買い食いの話を私がしてもお祖母ちゃんはひどく怒ったりはしていなかった。
むしろ、良かったねぇ。と私の頭を撫でてくれたくらいだ。

そんな幼いころの記憶が、母のいなくなった今ではとても幸せなことだったんだなって、シミジミ実感する。


< 70 / 199 >

この作品をシェア

pagetop