コイツ、俺の嫁候補。
「これ手作り?」

「一応」

「ありがとな。すげー嬉しい」



口を尖らせるあたしの頭を、那央がぽんっと撫でる。

いまだにそれだけでドキッとしてしまうあたしは、どれだけこの人のことが好きなんだろう。


でも、こうやって気軽に触れ合えるのも、あと少しなんだろうな……。

ふいにそんなことを考えて、きゅうっと胸が小さな泣き声を上げた。


そんなあたしの心情なんて知る由もない那央は、歩きながらリボンをほどき、フタを開けようとする。



「えっ、まさか今食べるの!?」

「ダメ? だって帰ってからだとあいつらに取られるかもしんねーし」



あぁ、たしかにそれはちょっと切ない……。

那央のために作ったチョコが、遠慮がないあのコ達の餌食になることを想像して苦笑していると。

あたし達の隣に、よく見慣れた白の軽自動車がゆっくり停まった。

え、この車……



「ちょっとー、縁じゃない!」

「お母さん!?」



ウインドウを下げて驚いた顔を覗かせたのは、やっぱりお母さんだった。

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