コイツ、俺の嫁候補。
あたしの言葉に、那央はピンときたらしく一人頷いている。

そうだよ、樋田先輩のことを好きになるきっかけになったあの時だ。

その相手がまさかこのヤンキーだとは!



「そういえばそんなこともあったな。樋田っつったっけか、アイツ。ほんと余計なことしてくれたぜ」

「先輩はあんたと違って紳士なんですー。ちょっと殴られたくらいでそんなに根に持つなんて、ちっちゃい男だね」

「んだと、テメェ!?」



うわ、やば。

顔をしかめて突然こちらに向かってこようとする陸に、さすがにあたしも身体を退いた。

あの時とは体格も違うし、もう力で敵うわけがない。


すると、隣にいた那央がスッと立ち上がり、立ち塞がるようにあたしの前に出る。

そんな彼に目線を奪われていると。



「いい加減にしろ」



──パコン!という音とともにドスの利いた声が聞こえ、那央の背中越しにそちらを見やると。

自分の上履きだろうスリッパを手にした藤丸先輩と、頭を押さえて悶絶する陸がいた。

どうやら藤丸先輩が一発お見舞いしてくれたらしい……けど、スリッパでっていうのが笑える。



「お前、俺がいることを忘れてないか?」

「す、すいませ……」

「後でグラウンド100周してこい」

「鬼~~~!!」

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