桜が咲く頃~初戀~
香奈と圭亮はお昼前に畑からおばぁちゃんの家に帰った。久しぶりに会った2人は何とか会話らしい会話が出来ていた。思春期を過ぎていのもあるけれど大人になったんだと思った。


おばぁちゃんの家に帰ってから香奈は何となく圭亮に言った。



『圭亮君お昼御飯食べて行かへん?』

香奈はおばぁちゃんの居ないこの家で1人になるのがたまらなく怖かった。

『ご馳走してくれるん?』


香奈がそう言ってネコ車に乗せていた大根を5本とも外の水場に下ろすのを見ながら圭亮は言った。圭亮が香奈からネコ車を受け取ると庭にある納屋の前に持って行って立て掛けたのを見て香奈は何故か父良幸の背中を思い出した。

ーお父さんー

『香奈ちゃんそんなぬ背中見んでや穴が空きそうやん』


そう言って圭亮が笑うと我に返った。香奈は慌てて大根を一本持って流しに行き束子でゴシゴシ洗い始めた。

『圭亮君、オムライスでかまへん?』

そう言うと圭亮は香奈の右隣に来て嬉しそうな顔で言った。

『うん。デカイのお願いします。俺昨夜から何も食べてないんよね』

『昨夜から?』


香奈は圭亮の照れくさそうな顔を見て聞いた。

『うん。昨夜から夜行に乗ってから今まで』


と言って笑った顔が香奈にはキラキラして見えた。


圭亮は香奈の花柄の割烹着姿がとても可愛いと思った。

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