桜が咲く頃~初戀~
『香奈ちゃんどうしたんね?返事をしんね 』


受話器から向こうの常ちゃんの声が漏れて来た。圭亮へ香奈から受話器を静かに取ると耳に当てた。

『常ちゃん、俺、圭やけんど香奈ちゃんは大丈夫なから心配せんでえいよ。バァちゃんはどんな?』


圭亮は抱えていた香奈の背中を摩りながら電話向こうの常ちゃんに聞いてみた。香奈の背中は思ったよりも遥かに小さく圭亮は堪らなく切なくなって来た。このまま抱きしめてしまいそうな気持ちを押し殺すしか今は無いのは分かっていた。

『バァちゃんならたったの3日の検査入院やしな。心配要らんのよ。香奈ちゃんはどんな様子や?心配ならあんたが病院まで連れて来たりなさいや』

そう言って常ちゃんは電話を切った。


『香奈ちゃん、バァちゃんは3日の検査入院やと。心配ないらしいけど落ち着いたらバァちゃんとこ行こう』

そう言って圭亮は香奈を静かに抱きしめ背中をポンポンと3回撫でた。


『圭亮くんごめんな。ありがとうもう大丈夫やし』

そう言って香奈は圭亮から静かに離れると苦笑いをして見せた。

2人は何だかやるせない気持ちになってしまった。
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