桜が咲く頃~初戀~
バスはガタガタと揺れながらおばぁちゃんの居る市立病院へ向かった。途中3つある停留所に人影は無く数秒バスは停まったけれど誰も乗せる事も無いままで車内はピーンt張り詰めた空気を保っていた。


『なぁ佳亮君。私なバァちゃんの所に来てずっと知りたい事があんねんやんか』

それまでの張り詰めた緊張の空気の糸を切って香奈はただ前を向いて固い表情を崩さずに黙って唇を噛んでいた佳亮の横顔を見た。

圭亮はその問いかけにゆっくり唇の緊張を解き口角を右に上げて寂しそうな顔を香奈に向けた。


『圭亮君、あの桜の樹の奇跡知ってる?』


そう言うと香奈は又窓の外を見ようとしたけれど外は薄闇がかかり窓にはまだ不安の顔をしている自分が映っていた。そんな窓に映る香奈の顔を見ながら圭亮は言った。

『香奈ちゃん何か見たの?』

『見たんってかな?出会った』

そう言うと香奈も窓に映る圭亮の目を見た。


『コトダマ』



圭亮は呟いた





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