ストレイ・キャット☆シュ-ティング・スタ-
 翌朝、大きな目覚ましの声で目を覚ます。ぼくはベッドから飛び起きる。

「メール……」

 久留美にメールを送ったあと眠ってしまったことに気付き、大急ぎで携帯電話を手にとると、久留美からの返信メールが届いていた。

「返信してくれてたのか? 久留美ちゃん」

『ありがとうショーゴ君。ショーゴ君の人生も色々あったんだね。あたしも大丈夫なときとそうでないときがあって、メール送ったり、送れんかったりもするけど、心配せんとってね。』
 
 ぼくは一先ず安心して、会社に出勤した。

「柏原さん、外回り出るの?」

「うん、ちょっくら御用聞きにでも行ってくるよ」

 事務の女性にそういって、ぼくは営業車で表に繰り出す。御用聞きとはいったものの、本当のいき先は、街のブック・ストア。五分ほど走ると立ち並ぶビルの中に在る、大型のチェーン・ストアが見えてくる。
 
 駐車場に車を停め、人の波を掻き分けて店内に入ると、平日とは思えない賑わい。ぼくは小走りになって目的のコーナーに到着する。

「え~と……」

 数多く並べられている書籍の中からひとつをとり出し、開いてみる。

“こころの病気に関するあれこれQ&A”

 そのコーナーにはその類の書籍が棚ビッシリと並べられていて、その数に驚いた。
 何冊かを斜め読みして、自分にも内容が解りやすそうな一冊を手にとって購入する。千五百円とけっこう高価だ。

「こういった本は高いよなぁ」

 愚痴ひとつ。ぼくは、そのまま車内に戻りページをめくる。

“パニック障害”

“強迫神経症”

“精神分裂症”

 ページにはたくさんの病名が記されている。そして、こころを病むと身体にも変化が起こることも書かれている。

「そういや、ぼくにもそんなことがあったよな」

 自分にも昔、似たような経験が有ったから、それが余計にぼくの気持ちをこんな風にさせる。

 身体に変化が起こり、苦悩した日々を思い返す。

 こころに付いた錆びた傷は、そう簡単には取れない。

 今でもぼくのこころの傷は、取れてはいない。

「神様はどうして、こんなふたりを出逢わせたんだろう?」


< 56 / 103 >

この作品をシェア

pagetop