君と私を、夜空から三日月が見てる
色々やられっぱなしだよ、この男には!

そう思って、私は大きくため息をつく。
ふと、壁にかかっている時計を見ると、時間はまもなく9時になりかけていた。

「やばっ!こんな時間だ・・・!
柿坂君、早くガソリンもって車取りにいかないと・・・」

そこまで言って、私は、横になってる柿坂君を見る。

すると・・・
またしても彼は・・・

無邪気な顔をして、気持ちよさそうにすやすやと寝ってしまっていたのだ。

「ちょっ!か、柿坂君!!ちょっと!!!起きてよ!!
車取りにいかないと!!明日出勤できないよ!?
柿坂君!」

そう声をかけても、彼はまったく目を覚ます気配もなく、あまりにも寝顔が無邪気すぎて、私にはもうなすすべもない。

「もぉ・・・しょうがないなぁ・・・・
そんなに無防備に寝たら、ナデナデするからね・・・っ!」

思わず口に出してそう言ってしまった私。
でも・・・
やっぱり柿坂君は起きる様子もなかった。

「困った子だなほんと・・・っ!もぉ!」

私は、恐る恐る手を伸ばして、ふんわりとした彼の髪を撫でてみる。
柔らかい髪。

パーマかと思ったけど、やっぱりこれ、柿坂君の自前の癖毛みたい・・・
ちょっとずるした気分だけど、柿坂君だって私のほっぺた撫でてたし、いいよね!

気づいたら、私は、なんだか一人で微笑んでしまっていた。

妙に癒されてしまったので、しょうがないから、明日は・・・迎えにきてあげよう!

私はそう思って、常備してるボールペンとメモを自分のバックから取り出すと、『迎えにきてあげるから、起きたらメールください』と書いて、テーブルの上に置いた。


イケメンはイケメンなりに大変なんだね?
ほんと・・・
お疲れ様・・・

ここぞとばかりに、もう一度彼の柔らかい髪をナデナデした私は、なんだか上機嫌でそっと彼の部屋を後にした。

鉄骨の階段を降りながら、ふと見上げた夜空に綺麗な三日月。
やけに得した気分だから、今夜はほくほくで眠れそう。
そんな出来事のあった、春の夜だった。

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