《続》手にしたあとは?
◆9◆



「それがお前の答えか。」


店長は開店直前の店内で氷を割りながら俺の話を聞いてくれた。




俺はテーブルを拭く手を止めた。



「考えを変えたんです。例え二度と華乃をこの腕に抱けなくても、華乃の笑顔を取り戻すタメならなんでもするって。」



「はなチャンが他の誰かのものになっても?」





「…っ。」



「当たり前だ。いくらでもその可能性はある。」



俺の頭に色んなヤツの顔がが浮かんだ。



「見守ります…っ!」




俺は布巾をぎゅっとにぎった。




「テーブル。丁寧に拭けよ?」




「はい!」




店長はやっぱり甘えさせてくれない。


いつも以上にハードな仕事を終えて家に帰る。


ヴーヴー




普段気づかない携帯のバイブが、寂しい一人暮らしの部屋に鳴り響く。メールだ。



華乃から。


『ありがとう。ごめんなさい。』




たった二言のメール。


良かった。返信すらなかったら、俺はもう立ち直れない。





大丈夫。華乃を見守る。




< 57 / 104 >

この作品をシェア

pagetop