世界の終りで愛を歌う
現実編

 小説を更新するのは疲れる。

今回はかなりの駄作らしい。

ふと一休みして、立ち上がり伸びをする実。

スウッと息を吸い込むと、

カレーの良い香りがする。

実はその香りに誘われて、

キッチンにやって来た。


「実君来たんだ。もうすぐ出来るからね」


と言って実の前に立つ詠美。

小説のヒロインとは似ても似つかない彼女の平凡な顔を見ると落ち着く実。


彼も小説の主人公とは違い、平凡な顔をしている。


所詮理想の人間を小説の主役にしているのだ。

理想と現実は違うらしい。

食事もいたって平凡だ。

だが、今日はサラダがある。

いつもはカレのみだ。
さすが未来の看護師。
詠美は、栄養の管理はお手の物らしい。


「その顔なら今回の更新は期待が出来るね。疲れた顔をしてるよ」

と詠美に言われて慌てて鏡を見る実。

その顔は確かに疲れていた。

目に軽く隈が出来て、
目に輝きが薄れ、軽く濁っていた。


やれやれ……こんな顔じゃ外は歩けないな。

と言いながら、結局他人の目など気にせず街に出かける実だったが。


「そろそろいいかな。いっぱい食べて下さいね」


詠美がよそってくれたカレーを美味しそうに食べる実。


「このカレー凄く美味しいよ。詠美ちゃん。噂は本当だったらしいね」


「噂って何ですか?」

と恥ずかしそうな詠美。


「秘密だよ」


と意地悪そうに言う実。

それをチラリと見て、食べ続ける実の母親。

彼女は食べる事が優先らしい。

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