記憶 ―黄昏の蝶―


アラタは先程の小屋に1人で戻り、俺はこの場所に留まった。

『獣も居ないし、他に生き物も居ないから安全なはずだ』と彼は言った。


暗闇の中に、独り。

手元には小さなランプだけ。


「…レンたち、大丈夫か?」

「カイト…アイツ、ちゃんとビビに伝えただろうなぁ…」

つい独り言を口にして、
自分の存在を確認したくなる。


独りってのは、苦手だ。

街では住民に、孤児院に帰れば俺はいつでも家族に囲まれ、自分の部屋以外で独りになる事はない。

それは寝る時だけの事で、
眠るとなると、
孤独を感じる「真っ白い何も無い世界を見る」事を指す。

今は真っ暗な闇だが、
孤独を感じる事には違いない。


闇の季節、
俺が暗い水中に潜る事を嫌う理由と同じで、帰るべき場所を見失いそうになる。

俺が帰るべきは、
あの場所だと自信を持ちたいのに、独りにされると急に不安になるのだ。


「…どうしろってんだよ…」

ゴツゴツと背中は痛かったが、俺は朽ちた祭壇の上に寝そべって、真っ暗な世界を見上げていた。

大分疲れていたのか、
次第に瞼が落ちてきていた。


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