記憶 ―黄昏の蝶―
「…しっかし、本当かねぇ?」
俺は椅子に腰を掛けたまま、大きく手を上げて身を伸ばす。
「…さてな。それはお前さんが明日確認するんじゃろ…?しかし、本当に氷漬けの人柱が在ったとしたら、我々の認識もちと変わるのぅ…」
じぃさんは博識。
特に協会内部に伝わる、神やこの星に関する伝承に詳しい。
俺を「光の子」だと認識したのも、古い伝承に詳しいじぃさん故の事だろう。
俺が違う人間に相談を持ち掛けていたとしたら、街中で大騒ぎで孤児院や学校には野次馬だらけだったはずだ。
「…おじぃちゃん。その『人柱』って、このカロリスが出来た時の話よね?」
「古い伝承によれば…」
ビビの問いに、じぃさんは眠っている様に頷いた。
「…って事はよ?ものすご~く大昔?それが氷漬け?今も?」
「なぁ?信じられないだろ?」
「うん、何か…ねぇ?」
現実味が、
あまりにも無かった。
想像もつかなかった。
理解も出来なかった。
「…あぁ、しかしなぁ。明日、心して行けよ…?リュウ。何があるか、分からんからのぅ…」
じぃさんの瞳は、
法皇同様にあまりにも真剣で、俺はゴクリと唾を飲んだ。
そんな馬鹿な話、
現実には無いだろ…?