初めての恋に溺れる人魚~my first love~
綺麗。
男の人だけど、心からその言葉が似合うと思う。
そう、まるで御伽噺の挿絵から飛び出してきた麗しい王子様のような―…
こんな私にとって、御伽噺の王子様という存在は恋心的な意味合いでは唯一の憧れの存在。
そんな存在と重ねてしまうということは、それほど彼の魅力が私の心を動かすものだったということ。
彼の黒い瞳も、じっと私を映してる。
これ以上見つめられると、その瞳に吸い込まれてしまうんじゃないかと思うくらい。
だめ。
これ以上、見ないで。
心の中でそう叫んで、瞳を反らし俯く。
けど彼は、もっと、その魅力に私を引きずりこむような言葉をこぼす。
「一瞬、人魚が唄っているのかと思った」
と。
その低い声で、こんな私に。
そんな私の手には、青みがかった粒が入ったガラスの小瓶。
寄せては返す波の音が、今もう既に物語が始まっているのよ、と静かに告げてるかのよう。