ガーデンテラス703号


振り向いたホタルがそのまま立ち止まってじっと私を見てくる。


「何?」

あまりにじっと見てくるから反応に困っていると、ホタルが無表情で訊ねてきた。


「お前、今彼氏いんの?」

「へ?」

じっと見てきたと思ったら、大して興味もなさそうな声でされたのはそんな質問だからわけがわからない。


「今は、いないけど……」

ほんとはもう3年もいないんだけど、曖昧にさせたのは私の中の小さなプライド。

ぼそりとホタルの質問に答えると、無表情で私を見ていた彼がほんの少し唇の端を引き上げた。


「だろうな」

ホタルがふっと鼻先で笑う。


だろうな、って……

それ、どういう意味……?


質問に答えたのに、返ってきたホタルの反応にムッとする。

そんな私を置き去りにして、ホタルはさっさとリビングに消えていく。

ごくたまーにちょっと親切に見えたりしていろいろとわけのわからないことの多いホタルだけど、総合すると感じ悪い

やっぱり私、ホタルのこと苦手だ。

彼の入って行ったリビングのほうを睨みながら、改めてそう思った。



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