ガーデンテラス７０３号

エレベーターを降りると、ホタルが前に立って部屋へと続く廊下を歩く。

鍵が空いたままのドアを軽々引き開けたホタルは、私を先に部屋の中にいれるとあとから自分も入ってドアの鍵をかけた。


「なんか、悪かったな」

玄関でふたりで無言で靴を脱いでいると、ホタルがひとりごとを言うみたいにぼそりとつぶやく。


「え？」

それが私に向けられた言葉なのかわからず戸惑っていると、革靴の紐を緩めるために前かがみになっていたホタルが視線をあげた。

ちょっと目つきは悪いけど、整った顔立ちをしているホタル。

そんな彼と下から見上げられるようにして目が合った。

普段は背の高いホタルに威圧的に見下ろされている感じだけれど、その角度で視線を交わしたときの彼の顔が綺麗で一瞬ドキリとしてしまう。


「あ、の……」

数秒目が合っただけで頬を火照らせかけていると、ホタルが私を見上げたまま口を開いた。