風の声が聞こえる
「お母さんも、ひとりじゃ寂しいんだよ」



むつみのほうがずっとお姉ちゃんっぽいな…。そう思いながら、笑った。今度は、作り笑いではない。


「いづみ、いろいろあって疲れたでしょ?気晴らしに温泉でも行こうか」


「うん…。でも私、さっきむつみに聞いた島に行ってみたいの…ひとり」


「ああ?ヨメ島?」


コロッケを口にしながらむつみが聞いてきた。


「そうそう。どんなところかわからないけれど、海は好き、だから…」


仲直りのデートは、いつもなぜか海だった。波の音を聞きながら、ただ、手を繋いで歩く…。それだけで、今までのことを波がさらってくれた。


だから…今回のことも、波がさらってくれるんじゃないか…って。


…いってきます…


< 10 / 37 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop