音色
奏の隣には女の子がいた。
何を話しているのかはちっとも聞こえないけど、ずっと前から知ってるようなそんな雰囲気が2人にはあった。







「ただいま…」




いつもならおかえりって奏が言ってくれてた。
だけどその声が今日はしない。

「あれ…?」

ぽたぽたと涙が頬を伝った。

「何泣いてんの、あたし」

もともとひとりだったのに、何を勘違いしてるんだろう。
たまたまあたしが奏を看病しただけで、それがきっかけで、今の生活が始まっただけ。
いつかは奏もこの部屋から出て行く日が来るだろうし、それよりもなによりもあたしは奏にとってただの同居人。
奏はいつも優しくしてくれるから、あたし勘違いしちゃったじゃない。
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