音色
奏の運転で、中華街に来た。
土曜日と言うこともあって、人がたくさんいる。
あたしと奏は、写メをたくさん撮った。
いろんなお店でちょこちょこ食べ歩きをした。

「琴音、ゴマついてる」

ゴマ団子を頬張るあたしの口についたゴマを指で取ると、奏はその指をぺろっと舐めた。
たったそれだけなのに、奏の指の感触が消えない。

(彼氏のふりするの、うまいなぁ…)

ふと現実に戻ってしまった。
中華街を後にして、あたしたちは家の近くまで戻ってきた。
そして、カフェでお茶をした。

「これ、琴音に」

そう言って奏は袋を渡した。

「わぁ〜!かわいい‼︎」

中に入っていたのはパンダのスプーンだった。

「俺のも買ったから、お揃いだよ」

「うれしい!ありがとう、奏!」

「喜んでくれてよかった」

「奏、このピアスのときもこっそり買って渡してくれたよね」

「琴音をびっくりさせたくて」

「あたし…自分ばっかり楽しんじゃって奏に何にも買えてない」

あたしが奏にそう言うと、

「琴音がいっぱい笑ってくれればそれでいいから。…それにこんなにおしゃれしてくれて。俺はそれで十分だよ」

と、あたしの頭を撫でてくれた。
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