一般人令嬢は御曹司の婚約者
蛍二十日に蝉三日
御曹司が風邪で学校を休んだ日の夕方には、使用人が続々と帰ってきた。
私はそれを玄関先で迎える。
彼らの第一声は、隆雄様はどうでしたか、だった。
対する私の答えは決まっていて。

「今は大事をとってお休みになられています。明日にはいつものようにご健勝なお姿がみられますよ」

それに皆、心配の表情を和らげるのだ。

御曹司よ、ここの使用人はみんなお前が大好きだ。

私にお土産を持ってきてくれた使用人もいて、ありがたく受け取っておいた。
ここに受け入れてもらえたようで嬉しい。

翌日。
仕事に向かう途中、あまり関わりのない3人のメイドに会った。
この時間に人に会うとは珍しいな。
会釈し、脇を通り過ぎようとした。
が。
瞬間、両方から腕をがっちり掴まれ引きずられる。

え、なに?

「祝前麻里奈確保!」

口に猿轡をかまされ、抵抗を許されず。
私は引きずられるままに連れて行かれ、どこかの部屋に押し込まれた。
床で強く体を打つ。

「んんっ……!」

何するの!

倒れた状態で振り向くと、扉を閉め、その前に立つ3人。
退路を絶たれた。

「何でこんなことするの!?」

自由になった手で猿轡を外し、怒鳴る。
するとメイドたちは、ニヤニヤと人の悪い笑みを浮かべた。

「ごめんなさいね、あなたに罪はないのよ」

「そうそう、全ては隆雄様の命令だから」

「私たちは従うしかないのよ」

順番に言い訳を口にする。

またボンボンか。
最近は丸くなったと思ったのに、今になってメイドを仕向けてきやがった。
昨日の看病してやった恩を忘れたか。

「そういうわけだから……」

「ちょっとおとなしくしといてね」

「大丈夫、抵抗しなければ何もしないわ」

手をわきわきとさせて距離を詰めてくるメイドたち。
ホラーとまではいかないものの、迫り来る恐怖に悲鳴をあげた。

「ひいぃっ!」

「はいはい、おとなしくする」

頭を床に押さえつけられ。

「いやっ……」

背中のチャックに手をかけられ。

「やめて…」

「はーい、手はこっち」

服を脱がされた。
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