石田君は2人います。
1.

◇◆◇◆◇◆◇◆

「早乙女さん~~次担当の仕事ね~~あれの営業してくれるの石田君になったから~~」




独特のしゃべり方の部長の言葉。
語尾を伸ばしてしゃべるから、やる気があるんだか、ないんだか……


この部所に7年もいれば、いまさら慣れたけど。そして、しゃべり方からは想像し難いが部長は真面目で頼りになることも知っている。


何度、助けられたことか。
時々、ボケボケなこともするけど……。
そんなところも許せてしまう部長だ。



「あの、営業部に石田君は2人いますけど…。」


企画の私が仕事をする上で、営業担当を知ることは大事だ。だから、営業部の人はできるだけ、名前と顔を覚えるようにしている。


いままでの経験からの学びでもある。




「ん~~。あ~~、そうだったねぇ~~、第2営業課の石田君~~。課長のねぇ~~。」




あぁ…確認しといてよかった……。部長、そこ、大事だから!!!


第2の石田君か……。
一緒に仕事したことはあるけど、もう3年前くらいになるか―――。



「はぁ。」
正直、やりづらいなぁ。


自分のデスクに戻りながら、浮かない顔をしてしまった。ついでにため息も。


第2石田君なら誰もが一緒に仕事をしたがる人気者なんだけど……。

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