クラッシュ・ラブ

「オレでも作れる?」


ぽそっと聞こえた言葉に、わたしは目を点にした。


……え。あれ……。嫌いじゃなかったんだ、やっぱり。
そっか。なーんだ。よかった……。


拍子抜けしたわたしは、少し間を開いてから答える。


「はい。カンタンですから。あーでも、よかった。たぶん、好きかな? と思って出してたから……」
「『たぶん』?」
「あー、はい。ほら、初日に。親子丼を食べてたじゃないですか。あのとき、ユキセンセ、紅ショウガいっぱい食べてるんですもん。生姜は好きなんだろうな、って思ってたから」


あの日の、彼が親子丼を食べてる姿で思い出し笑いをする。
そして、今、生姜を手に持ったセンセを見て、その生姜をあのキッチンで一人すりおろす姿を想像して、また笑う。


「……なんで笑うの」
「え。あ、ごめんなさい。……ぷ」
「……いーけど」


それから、いつの間にか、隣に並んで歩いていた。
生姜と水と、ケーキやシュークリームが入っているカゴをレジに出す。


「甘いもの、ほんと、好きなんですね」
「…………」


そのわたしの言葉にはなにも返ってこなかったけど。ちらっと見上げると、少し照れたような顔をしてるのがわかって、また笑ってしまった。

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