あなたには聞こえますか…………
(とうとう始まった……)

雪は目の前の現実を受け入れつつも、ま

だ夢であってほしいと願っていた。



幸い、救急隊の者達はテレビを見ておら

ず雪達は、至急要請のある場所に向かっ

ていた。

署内にあるすべての車が動く大惨事と化

していたのである。



病院側も受け入れが困難な人数にまで膨

れ上がり、雪の管内だけではなく、日本

中が大パニックの様と化していた。



当然のように、現場には人形のようにな

っている者たちで溢れ、収容先の病院を

探し搬入を繰り返しす。



雪は、休む暇もなく走り続けていた。

死者数はどれくらいになるのか、想像も

出来ない。

ただ間違いないのは、今までに繰り返さ

れた一連の事件の中では、今回が最大規

模の犯行ということだ。



救急車が狂ったようにサイレンを鳴らし

、街中は地獄絵図のような様と化してい

た。



猛スピードで走り抜く車内で、雪は不可

思議な事が頭の中を巡りだしていた。



あまりにも急な事件で、冷静さを失って

いたのだろう。





(なぜ、俺は生きてるんや)



雪の頭の中には、その言葉が繰り返し流

れていたのだ。





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