fingertip

いつも・・・

そんな過去がある私は、
人の指先に触れるのが怖くなった。


人に迷惑をかけないように
いつも過ごしてきたのに
転校先の中学でもうまくいかず、
名前さえも覚えてもらえない日々。

無表情でいつも1人でいる私をクラスのみんなには、暗いなんてレッテル貼られて。

私はここにいるの?
って不安になるほどだった。

そして、いつの間にか中学生になって
半年がたっていた。




休み時間。



休み時間だって、私は大好きな小説を
自分の机に座って読んでいる。

人から見られる視線や声が聞こえなくなり、自分の世界へいられる。


小説はリボンよりも好きになっていた。

それに、小説を読んでいれば
誰かに指先が触れない。


私は、窓側の1番後ろの席。

秋のほかほかした日差しが心地いい。



友達という存在さえも忘れかけていた私は、1人で過ごすことが普通になっていた。


私の家は、父は仕事が忙しくあまり家にいないし、母も最近パートを始めて私が家に帰ってきてもいない。



でも、さみしくなんてない。



もっと悲しい事があったから・・・。



「あっ」



ふいに近くから声がした。
< 6 / 54 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop