ベランダ越しの片想い
「咲歩に、さ。
俺、訊きたいことがあるんだけど」
「なに」
「訊くつもりはなかったけど、やっぱり気になってさ」
「うん」
「なんで知ってるのかって言われるかもしれないんだけどさ」
「うん」
「……確認したいことがある」
「言って」
そう告げると、彼は小さく息を吸う。
「どうして咲良にあんなこと言ったの?」
「あんなことって?」
「俺と付き合ってくれって。
傷つけないでくれって」
言ったんだろ? と念押ししてくるアキに気が遠くなるような気がした。
だけど、冷や汗が背を伝う中、どこかわかっていたような気もする。
今日じゃなくて、少し前。
3ヶ月前のアキとわたしの運命が変わったあの日のこと。
無理やり唾を飲みこむと、なにかが詰まったかのように苦しくなった。