ベランダ越しの片想い




「わたしは大切なものを間違えたくない。
それで、大切なものを大事にしたい。
残酷だけど、1番である桜田くんがなによりわたしにとって重要なの」

「アキの1番は、清水さん、なのに……」

「うん、だからこそ。
わたしはもう中途半端なことをして、川崎くんを傷つけたくない」



たどたどしく、ゆっくりと。

それでも必死に自分の言葉を紡ぐ清水さんの瞳はよく知っていた。

……アキが清水さんを見つめる時のそれだ。



「だから、川崎くんを想っている咲歩ちゃんが彼を幸せにしてあげて」



そう言って、わたしの横を通り過ぎていった清水さんは、出会った頃より少しずつ。

だけど確かに変化していっていて。

わたしはそれがすごく、羨ましくなった。







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