キスキすき







いつからこんなに




背中は大きくなったの




あたしにとってはいつも大きな存在だった



だけど




どんどん背は高くなっていって




小さい頃は、あたしの方が高かったよ




でも今は




体だけじゃない




中身も



どんどん男の人になっていって




周りはそれに気づいて





好きになって





どんどん




遠い存在に





「着いたぞ」



洸紀の声で、もう自分の家の前だということに気づく



洸紀の家の方があたしより手前なのに



わざわざあたしの家の前まできて




あたしが家に入るのを確認してから




自分の家に入る




すぐ隣なんだから




洸紀の家からあたしの家にかけてのほんの数歩で何か起こるわけないのに




「…ばいばい」




わかってたよ




洸紀は優しい




ぶっきらぼうに背を向けてただ前を歩いていても




その歩幅は、いつもより狭くて




まだあたしの喘息のことを心配してくれていた




「じゃあな、気をつけろよほんと」




薬を飲まなかったこと、まだ怒ってるふうにしているけど




本当はそれも




すごく心配してくれてるからだって




わかってるから





わかってしまうから





「うん」




ごめん、あたし




嬉しいよ




このままずっと心配してくれればいい



他の子なんか見ないで



あたしのことだけを考えてくれればいい




そう




思ってしまうのは




傲慢?我が儘?





やっぱり好きだと自覚した




洸紀と列んで歩いた帰り道





あたしは





覚悟を決めたよ











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