キスする顔さえ美しい



高い鼻は横から見ると直角二等辺三角定規のような美しい直線を描いていて、目の間のくぼみが一層ほりの深さを引き立てていると感じた。


それが、『その瞬間』を見た私の最初の感想。


次いで、閉じたように見えて薄く開かれた瞳がやけに色っぽいと思った。



人は衝撃が大きすぎると却って冷静になってしまう。

それを身をもって知った私、小山純香22歳は、今、会社の資料室で息を殺して身を潜めている。



先輩に押し付けられた面倒な仕事。

あまりに古くパソコンに入っていないデータを探しに私は薄暗い資料室で棚を探っていた。

そして、黙々と作業に没頭して数十分後…ふいに誰かが入ってきた気配がした。


まるで隠れるように音も無くドアを開閉し、静かに入ってきた人影はふたつ。


同じ課のリカ先輩と、――憧れの戸田課長。


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