いつか、また

*



それは、快晴の広がる昼下がり。


「・・・っ……センパイ……本当に、行っちゃうんですか・・・?」


髪をふたつに結わえた小柄な少女が、飛行機の搭乗フロアで泣きじゃくっていた。


「あー、泣かないの。お盆とお正月にはちゃんと帰省するし、たまに電話するから」


泣きじゃくる少女をあやすように困った顔で告げる女性は、搭乗フロアにあるデジタル時計を一瞥する。


「……だ、って・・・希緒センパイも、修センパイも……みんな、みんな上京して・・・私だけ……っ…………」


しゃくり上げながら言う姿はまだ幼さが残り、彼女が泣く度にふたつに結わえた髪が揺れた。少女の心境を暗示するかのように小刻みに揺れる髪は、幾度となく目の前の女性や、彼女等の仲間によって愛されてきた少女のトレードマークである。


「花奈・・・このまま、二度と会えない訳じゃないんだから、もう泣かないの」


デジタル時計の示す時間は14時05分。飛行機の時間が14時30分だから、それまでには手荷物チェックを済まさなければならない。


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