戦乙女と紅~呪われの魔槍の章~
第四章 暗闇の死闘

黒の旅団が近いうちに女神国に攻めて来る。

翌日に、乙女はその事を女神兵達に伝えた。

…意外というべきか当然というべきか、その事で恐れを為す者は誰一人としていなかった。


まぁ俺が選び、俺が鍛え上げた女神兵だ。

戦が恐ろしくて身を縮めるような臆病者は選んでいないし、そういう鍛え方もしていないつもりだ。

兵の殆どは、やっと巡ってきた女神兵としての初陣に闘志を高め、己を鼓舞する。

何より国を守る為、民衆を、大切な者を守る為の戦だ。

乙女を慕ってこの国にやってきた者達は、攻める事よりも守る事に対して強い力を発揮する。

そもそも、そういう戦い方を好むのは乙女だ。

自然と剣を預ける者達もそういう者ばかりになる。

「紅様、敵はいつ攻め込んでくるのです!?」

鍛錬中。

俺と模擬戦をしていた若い兵士が、待ちきれないとばかりに俺に問いかける。

「さぁな、そればかりは黒の旅団に訊いてみるしかあるまい。そんな事よりも」

俺は隙だらけの兵士の足元を、槍の払いで掬い上げる!

為す術もなく、兵士はその場に尻餅をついた。

「浮き足立っていないで鍛錬に集中しろ」

「は、はいっ!」

すぐに立ち上がる若き兵士。

「もう一本、お願いします!」

負けん気が強く、向上心があり、何より国を守ろうとする強い意志がある。

こういう兵士がいる限り、女神国に敗北の二文字はないだろう。

俺は、腕は未熟ながら瞳に強い光を宿すこの兵士を頼もしく思っていた。

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