戦乙女と紅~呪われの魔槍の章~
一直線に俺目掛けて飛んでくる短剣。

狙いに狂いはない。

このままいけば、確実に俺の左胸に突き刺さる。

「紅、殺(と)ったぁっ!!」

樹上で漆黒が叫ぶ。

しかし。

俺は地面に槍を突きたてた。

そして素早く跳躍し、その突き立てた槍の上に飛び乗る!!

…前後左右に張り巡らされ、俺の動きを封じたかのように見えた鋼線だが、実は上方には逃げ場が残っていたのだ。

当然、漆黒の投げた短剣は俺に命中する事無く空を斬る。

「な!?」

驚愕する漆黒。

「残念だったな」

槍の上に片足で立ち、俺は腰に下げていた双剣を抜く。

護身用にいつも持ち歩いている、かつての相棒だ。

「貴様の人生には同情するが、負けてやる訳にはいかん」

「くそっ!」

戦況が不利と見て、逃げようとする漆黒。

だが俺は槍の上から一足飛びに間合いを詰め、樹上の漆黒を追い詰め。

「情けだ、苦しめはしない」

一撃で急所を貫く!!

…悲鳴はなかった。

痛みも苦しみも与えず、漆黒は俺の双剣によって絶命した。


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