ときどき
「なになに、仲良さそう浅野さんたち。混ぜて!」

突然、いちごオレのパックを握りしめた佐伯くんが、ひょっこりと姿を現した。
いるよね、こういう可愛いもの飲みたがる男子。
足立くんは意味の分からなさを前面に押し出した表情をする。
渡部さんは全力で緊張している様を隠しきれない表情をする。
あ、これ私の番だ。

「混ざって混ざって!見てこれ足立くんが自分で作ってるんだってー!」
「あはは、かわいー!狙いすぎー!」
「だよねー!あ、私もいちごオレ好きだよ!」
「うまいよねこれ!俺ここのメーカーじゃないと飲めないんだよね!」
「分かる!私は別のメーカー推しだけど!」
「おまえら、二人で喋りだすとうるさいな」

足立くんが呟き、我々ははたと黙った。
なんか、確かに語尾にエクスクラメーションマークがつき続けていた気がする。
足立くんや渡部さんよりはるかに波長の合う人物が現れたのだ。
しょうがないと思うんだけど、なんだか置いてけぼりにした感があって少し悪い気がした。
焼きそばパンを咀嚼する作業に取りかかって、会話の受け答えを拒絶することにする。

「ごめんごめん。三人って、同じ中学?」
「・・・あ、浅野さんは違うんです。私と実里くんは小学校も中学校も同じなんですけど・・・」
「あれ、そうなの?足立が浅野のこと指名してたし、てっきり」
「あれは、報復」
「あー、そうなのね。浅野さん、浅はかな事したねー!」
「ほんとだよ、バックに足立くんいるとか知らなかったし」
「あの、委員長の事は、本当にいいんですよ・・・?」
「渡部さん俺に任せててよ!完璧にサポートするから!」

佐伯くん、どっちかというと委員長の座を乗っ取り気味だけどな。
なんかあんまり仕事させてもらえないのもそれはそれで嫌かも。

「あんまり甘やかさなくていいぞ、こいつ。やることはやるから」
「分かってるって!どうせ俺あんまり使えないから、応援しとくだけ!」

あれ?なんだか足立くん、代弁してくれたな。
察しは悪くないのかも。
< 9 / 53 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop